『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』エマニュエル・トッド
お久しぶりのアップになりました。
- 主治医の先生にも早寝をきつく言われたが、結局守ったのは3-4日ぐらい
- 仕事も、変わらず8:15-19:00のペースが続き、忙しくなる(忙しくしてる?)
- 昼間、仕事でメールをたくさん打って、疲れて帰ってきて、それからウチでもパソコン開いて、ブログを書く気にはならなかった
- 次のブログのテーマは、「うつうつ日記」をひと休みにして、標記の本を取り上げようと決めていた
- 実は、わたしの勤めている会社は、ドイツの会社
- わたしは、自分の会社を離れて、一般的に「ドイツ」というと、どうしても「ナチス」を思い浮かべてしまう
- この機会に、標記の本だけでなく、自分の会社のこと、及び(第二次世界大戦終結後70年ということもあり)、ナチスに関する本も、取り上げてみようと思った
- ただ一方で、テーマが、広く深い重いものになってしまい、書く手が重くなった
- 今週はお盆休みで、書く余裕が生まれた
この本を、約1か月前に読んでいました。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
- 作者: エマニュエル・トッド,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: 新書
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なかなか売れているようです。ここにきて、EUのリーダー、インダストリー4.0を展開など、日本にとっても、ドイツは大国としての地位にあがってきた印象で、今後ドイツをどう位置づけたらいいか、素朴な疑問があるのではと思いました。
- ドイツが、ここ5年で経済的に政治的に、ヨーロッパのコントロール権を握った
- フランス・オランド大統領は「ドイツ副首相」(著者のトッドはフランス人)
- 最近のドイツのパワーは、かつて共産主義国だった住民を、EUの東方拡大によって、資本主義の中の労働力とすることによって形成
- 「ドイツ圏」の規模は2億人
- ガスパイプラインの真の問題は、ウクライナを通過していることではなく。到着点がドイツにコントロールされていること
- 自分たちが一番強いと感じるときには、ドイツ人たちは、より弱い者による服従の拒否を受け入れることが非常に不得意
- ロシアをみくびってはいけない
- オランドは「マルク圏」の地方代表
- 真の権力中枢はメルケルでなくドイツ経済界
- フランスが発明し、ドイツ人が利用したユーロ
- 日本の文化が他人を傷つけけないようにする、遠慮するという願望に取りつかれているのに対し、ドイツ文化はむき出しの素直さを価値付ける (同意です)
- 反ユダヤ主義と新ユダヤ主義がユダヤ人問題への病的なまでの過剰な関心の二つのバージョンであるように、ドイツ嫌いとドイツ崇拝はドイツを大真面目に捉えすぎる傾向の二つの様態であり、このことは問題を悪化させる方向へ働く
わたしの会社は上述のように、ドイツの会社です。
わたしが20〜30代前半の頃は、まだ創立数十年の伝統ある?日系の会社だったんですが、90年代後半から徐々にドイツ資本が入っていき、最終的に買収されました。結果、勤めていた会社はドイツの子会社になりました。それと前後して、本社からドイツ人も次々と来るようになって、そこらじゅうにドイツ人(や外国人)が居るようになりました。わたしの上司が、ドイツ人だったこともありました。
あまり、ドイツをご存知でない外部の方で、「日本人とドイツ人は似ているところがあるから、やりやすいんじゃない?」なんておっしゃる方もいるのですが、私に言わせると「全然ちがいます」。
人の違いというか、企業統治システムが決定的に違います。そして、どうしても,わたしは、弊社のドイツの仕事の仕方に、なじみません。(ドイツ人の中には、個人的に好きな人や尊敬する人も、もちろんいます)
飛びますが、なんせ、学生時代のときから、サッカーワールドカップでドイツが嫌いでした。カラダがでかく身体能力に優れているところを活用し、ごつごつ当たって、そして絶対あきらめない「不屈のゲルマン魂」に、畏怖と不気味の感情がないまぜになって、生理的にどうも好きにはなれませんでした。
就職して、十数年たって、よりによって、自分の勤めている会社がドイツの子会社になるとは思いもしませんでした。
- トップダウン、本社(ドイツ)による中央集権、大きな戦略はドイツが決める
- ボトムアップはなし
- 例えば、現場レベルからの新規事業創出なんて話は、ドイツの会社になってから聞いたことがない
- 新しいビジネスやM&Aなど、ドイツ本社がほとんどすべて決める
- 日本法人は、ほとんどドイツ本社上層部の方針・戦略に従い、オペレーション(=売上・利益の向上)をこなすだけ
- 世界の子会社(日本法人)の上層部は、ドイツ本社の意向に従った人間またはドイツ人がつく
- ルールをこと細かいところまで設ける(設けないと落ち着かない?)
- データでとにかく重箱の隅まで社員を管理(人事管理も全世界ドイツルールで統一)、日本人からすると病的なほどの細かさ、よく言えば徹底的にITを活用
- 社内の階層をきっちりと設けてヒエラルキーを厳然と設ける(これは日系企業も同じかな)
- 話しが長い
- 質実剛健、悪く言うとファッションセンスはない
- (ドイツだけでなく欧州全体)長期の休みに入った人のリカバリー、引き継ぎがないことが多い。お客様への納入が絡む生産管理部がこの状態になると、日本サイドはお客様への未納を防ぐため、怒りをこらえながらだいたい休んだ人の上司へエスカレーション
いいところ
- 日系企業よりは休暇は取りやすい、かな(もちろん、社内のドイツ人は日本人より休む、夏や年末年始に3~4週間休むドイツ人もいる)
- 女性の活用に熱心
あと、今のドイツの方々には関係のないことなんですが、わたしはドイツというと、ヒトラーやユダヤ人のホロコーストやアウシュビッツのことを、時々思っていました。それだけ、抗しがたい負の魅力があるということでしょうか。
ちなみに、今の会社で、ドイツ人にナチスについて話したことはまったくありません。ドイツ本社からの社内報みたいなもの、又はイントラによるニュースでも、取り上げられたことは1回もありません。触れるのはタブーのような感じです。
まあ、今のドイツ人の方々にとっては、触れられたくない話しなんでしょう。
犠牲者の多寡で言えば、
- 太平洋戦争で亡くなった日本人 280~300万人
- ナチスのユダヤ人虐殺 600万人
- 第二次大戦の独ソ戦争のソ連の死者 2000万人
- スターリンの粛清の犠牲者 2000万~4000万人
- 毛沢東の大躍進、文革による死者 5000万人
というふうにも言われて、スターリンや毛沢東のほうが、犠牲者の数で言えば、ナチス・ドイツよりはるか上です。
でも、中国人やロシア人見ても、毛沢東やスターリン(の虐殺)をほとんど思い浮かべないのは、なぜなんでしょうか。関連本を読んでみました。
わたしの要約&結論は、
「虐殺のための工場を国内外に多数(数百?)(工場への鉄道も)造り、ナチス初期の1920年代から党是にあげ、ある人種(ユダヤ人)の根絶のため、虐殺を工場生産のように計画的に行ったのは、ナチス・ドイツのみである。これは戦争犯罪(戦争にともなった殺害・虐殺)でなく、人道に反する犯罪である」
こう定義すると、上のスターリンや毛沢東のおびただしい犠牲者に対しても、質的にはなんら劣ることのない犯罪ではないかと思いました。
以下、関連する本・映像です。
日本と比べてドイツは偉い、よく反省している、日本は反省が足りない、という本でした。 昔、よく言われたパターンですが、日本とドイツを比べる意味が良く分かりません。ドイツのような、戦争とは別に(並行して)計画的に、ある人種を根絶させようとしたことは、日本にはありません。
これは、ナチスが誕生する第一次世界大戦後から丁寧に書かれており、参考になった本でした。ヒトラーとナチスは、用意周到に合法的に選挙をもって、政権を取ったことがよくわかります。もう、ここで、早くもおなかがいっぱいの感じになりました。
ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)
- 作者: 芝健介
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/04
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ホロコーストがどのように実行されていったかを検証する本です。少し読んだだけで、おなかがいっぱいになりました。
どういう技法で、ヒトラーは大衆の心・票をつかんでいったのか分析した本です。分析して、本にするまで、関係者にかかった工数がかなりの量です。これも読了まではいたりませんでしたが、著者・関係者の努力に頭が下がります。
アウシュヴィッツは終わらない―あるイタリア人生存者の考察 (朝日選書)
- 作者: プリーモ・レーヴィ,竹山博英
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
- 発売日: 1980/01
- メディア: 単行本
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上の本と、下の本はアウシュビッツから生還した方の手記です。「夜と霧」は有名でレビュー見ると絶賛の嵐で、試しにちょっと前に読んでみましたが、あまりピンときませんでした。著者のトーンがなんか第三者的な見方で(だから生還できたのかもしれませんが)、客観的で感動が薄いというか。。読了はしていませんが、上の「アウシュビッツは終わらない」の方が、生々しい感じがして、いいように思いました。
- 作者: ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/11/06
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下は、94年に書かれた、ちょっと古い本です。ドイツの犯した罪と、日本の犯した罪は同列には論じられないと喝破しています。会社がドイツの会社になる以前に読んだ本で、この本で、決定的なドイツに対するアレルギーをもったのかもしれません。
メリル・ストリープ主演『ホロコースト -戦争と家族-』DVD-BOX
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
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- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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NHKスペシャル 映像の世紀 第4集 ヒトラーの野望 [DVD]
- アーティスト: 加古隆
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’90年代後半にNHKで放送されたものです。このシリーズ、当時リアルタイムで見てました。当時の貴重な映像を淡々と中立に積み上げ、冷静なナレーションと加古隆さんの音楽が、悲劇を際立たせていた印象を持っています。シリーズ中、このヒットラーの回が、アマゾンのレビューで最も絶賛されています。やはり、ヒットラーとナチス・ドイツの抗しがたい負の魅力なのでしょうか。検証のため、購入して、もう1回見たいのですが、高いのが難点です。
ここまで、やっと書きました。疲れました。
標題の本のテーマからどんどん膨らんでいき、負のエネルギーが大きすぎるテーマになりました。
あまり自分が勤めている会社を否定すると(それがいやで転職活動をたくさんしていたことがありました、転職活動たくさんやったのもメンタル病んだ一因です)、自分も否定することになると思うので、難しいところです。
一方で、自分の会社での経験踏まえて、及び関連本読んだ、
感想結論は、
「ドイツ(人)恐るべし」
日本も、見習うところは見習って、負けないようにしなければ、です。
今回は、なんかまとまりがなくなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
ではでは。